Android向けの、小さいサイズのキーボードが売りのIMEであるMinuum KeyboardがAndroid Wearに対応したと聞いて*1試してみました。
ありがちな誤解の訂正
まず、ありがちな誤解*2について。以下を踏まえて、以降を読み進めてください。
- 以下のGoogle Play Storeで配信されているMinuum Keyboardを端末(母艦)にインストールしても、Android Wear側で使えるわけではありません。
- Minuum Keyboardは、AndroidのIME (
InputMethodService
) の実装であり、Android Wearの音声入力を置き換えるものではありません
IME on Android Wear
そもそもAndroid Wearからの入力は、音声入力もしくはGUIからのごく簡素な入力を前提とされています。
従って、プリインおよびGoogle Play Storeで公開されているAndroid Wear向けアプリには、EditText
で文字列を入力させるインタフェースを備えているものはありません。
Android Wear向けアプリでEditText
を使用することは可能ですが、Wearには(少なくとも、LG G Watchには)EditText
をタップしたときに起動するIMEがインストールされていないため、入力はできません*3。
端末にインストールされているIMEは、以下のコマンドで確認できます。
$ adb shell ime list -a
これを通常のAndroid端末に向けて叩くと、IME(InputMethodService
の実装)のID, name, packageNameなどが出力されます。
しかしAndroid Wear端末では、出力がありません(つまりIMEがひとつもインストールされていない)。
IMEのインストールと有効化
AndroidにおけるIMEは、ひとつのアプリとして端末にインストールすることができます。インストールまでは通常のアプリ(apk)と同じ手順で行ないます。
Minuum Keyboard(apkファイル入手方法は後述します)では、adb install
コマンドで直接Wearデバイスにインストールします。
$ adb install -r PACKAGE.apk
インストールしたapkは、通常のAndroid端末であれば設定アプリの"言語とキーボード"で有効化を行えますが、Wearデバイスにはこの設定項目がありません。そのため、以下のコマンドで有効化を行ないます(Minuum on Android Wearの最新の手順にはime enable
コマンドも書かれていますが、ime set
コマンドだけで有効になります)。
$ adb shell ime set PACKAGE_NAME/.SERVICE_NAME
PACKAGE_NAMEにはapkのパッケージ名、SERVICE_NAMEにはInputMethodService
のクラス名を指定します(Minuum Keyboardでは、インストール方法のメールに書かれています)。
これで、インストールしたIMEを使えるようになります。
Minuum Keyboardの利用
IMEを起動するにはEditText
を配置したActivityが必要です。Minuum Keyboardには、その設定アプリ内に動作確認を行なうことのできるEditText
が配置されているため、それを利用して確認します(独自のIMEをインストールした場合は、EditText
を備えたアプリも用意してください)。
1.ランチャーから"開始..."を選択し、"Minuum Settings"を探してアイコンをタップします
2.起動には少し時間がかかります(一旦Watch Faceに戻りますがそのまま待ちます)。数秒後、MinuumのAgreement画面が表示されますので、内容をよく読んで"I agree"をタップします
3.設定画面が表示されたら下にスクロールして、"Cheat sheet"をタップします
4.チートシートとEditText
、そしてMinuum Keyboardが表示され、入力することができます。この画面を抜けるには、他のWearアプリ同様、右にスワイプします。
Minuum Keyboardの入手
Android Wearで動作するMinuum Keyboardは、下記ページにサインアップ*4することで、メールでインストール手順とともにapkのダウンロードURLが届くはずです。
メールには、本エントリで具体的には書かなかったパッケージ名なども記載されています。基本的にメールに沿って実行していけば大丈夫なはずです。
Minuum Keyboardの使い勝手
そもそも、Android向けのIMEとしての実績があるアプリケーションで、小さいキーボードと、それに伴なうtypoを前提としてカバーする(予測変換的な)アルゴリズムが売りのようです。
ある程度typoしていても構わず入力していくと、正しい(入力したかった)単語が候補として表示されます。右スワイプで確定&スペース空け、左スワイプで一語削除と、一般的な英文であればスムーズに入力していくことができます。
ただ、記号の入力は辛いのと、老眼の人には細かすぎて厳しいような気がします。私はまだ全然大丈夫です。
現在、様々なデバイス向けのSDKを準備中のようで、下記サイトの下のほうに動画とサインアップフォームへのリンクが貼ってあります。
どのような販売形態・価格体系になるかわかりませんが、Android Wearのようにインストールに制約がある(コンシューマが簡単に使えない)デバイス向けには、SDKとしてアプリにバンドルさせる形を想定しているのではないでしょうか。
所感
Android Wearでも(設定すれば)IMEが使えるというのは面白いですね。
設定には開発者向けツールが必要なのと、インストールしたとしてもIMEを使えるアプリ(EditText
で入力させるアプリ)が無ければ使いどころもないので、すぐ実用化、一般化、となるものではないでしょう。しかし、ひとつのデバイスとして遊びどころはまだまだありそうです。
最後に。Android Wear 勉強会 #2の参加エントリも書かず、こんなの書いててごめんなさい…
*1:Android Wear対応の超小型ソフトウェアキーボード登場 | GGSOKU - ガジェット速報
*2:誤解というか出ている情報だけでは判断つきませんよねー
*3:Logcatを見る限り、特にエラーを吐くこともなく、なにもおこらない
*4:Mailing Listと書かれていますが、いわゆるMLではなく一方通行のアナウンスが送られてきます