東海大学 高輪キャンパスで行われた、日本Androidの会のイベント「ABC 2014 Winter」においてVR部として一部屋いただき、Oculus RiftなどによるVRコンテンツの展示、またタオバイザー(Cardboard互換HMD)向けアプリ作成のハンズオンを行ないました。
私はほぼ展示に張り付いていたので、そこで得られた知見・改善点などを書き留めておきます。
なお、セッティング等どうしても汎用的な方向に振るしかなく、当日余り良いVR体験を得られなかった方もいらっしゃったはず。お詫びするとともに、できればこれに懲りず、よりご自身に合ったセッティングで体験いただける機会にリベンジしていただけましたら幸いです。
Oculus Rift DK2
Oculus Riftは、Oculus VR社が販売しているHMD(Head Mount Display)です。現在、DK2(Development Kit 2/開発キット)をOculus VR社のWebサイトから購入(個人輸入)することができます。
今回VR部ではこれを2台(2コンテンツ)用意し、VR(Virtual Reality)体験してもらうという展示でした。
セッティングのポイントは以下3点。
- レンズはA(通常・遠視向け)固定。ある程度の近視の方には裸眼、それで無理そうな方にはメガネ着用で体験していただきました*1。ここは妥協。
- レンズ距離は一番近くに設定。私としては少しだけ離すのがベストなのですが、今回は両手が空くコンテンツですし、見づらい方には手で保持して顔から離して調整してもらうことに。
- IPD(瞳孔間距離)は、今回は5.5cmとしました。IPDについての詳細、決め方など『Oculus Riftでオレの嫁と会える本』Chapter 8-1を参考にしました。
Oculus Riftでオレの嫁と会える本 UnityとMMDモデルで作る初めてのバーチャルリアリティ
- 作者: 桜花一門,ゆーじ
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2014/12/16
- メディア: 大型本
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VRコンテンツ作成の入門書的な本ですが、VR酔いへの対応策なども丁寧に書かれています。ぜひ手元に置いておくべき一冊。
PC
880M SLI搭載のゲーミングノートを使用しました。OSはWindows 7。ノートのメリットは本体の可搬性と、説明員が状況を確認するためのモニタがあること。展示に使用するのでなければタワー型のほうがコスパいいです。
おすすめ設定は下記を参照。
コンテンツ
展示したコンテンツは、@youten_redoさんチョイスの以下ふたつ。
UnityCoaster2 UrbanCoaster
iWorks(@x68user)氏によるジェットコースターの定番。Oculus SDK 0.4.4対応のV1.1を使用。
UnityCoaster2 V1.1リリースしました。
変更点はSDK0.4.4+Unity4.6対応、コース若干修正、スピードUP、同乗キャラ追加です。大きくは違いません。
http://t.co/A4SnCnqGQl
— iWorks (@x68user) December 16, 2014
Unity-Chan "Candy Rock Star" Live Demo
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン制作の「ユニティちゃん」ライブのOculus Rift対応版。GitHubリポジトリのoculus
ブランチのものからOculus SDK 0.4.4に入れ替えたもの。
展示向けコンテンツの要件
必須要件としては3点。
- 適度な長さ(この点、ユニティちゃんライブはショートに変えたほうがよかったかも)
- VR酔いしにくい品質(75fps出ること)
- 一回再生するごとに停止し、何らかのアクションで次の再生がはじまる(体験者が入れ替わるため)
さらに、3DVR体験としてのわかりやすさから、あったほうがいい特徴3点。
今回は借り物のアプリですが、展示を回す中で「あったほうが良い」と感じたことがいくつかありました。今後、自作する際には入れていきたいのが以下。
R
キーでポジションのリセット。これはOculus SDKのCameraには入っているのですが、Cardboard向けアプリでも何らかのジェスチャーでリセットできるような仕掛けは考慮したほうがよさそう- 再生を中断して、アイドル状態に戻る機能*2。これが欲しい理由は以下2つ。
- 体験者が途中でHMDを外して離脱してしまうことが何度かあった
- 体験者がいないとき、PCのモニタで再生しておきたい。それを、体験者が来たときに中断したい。
その他、準備したもの
ヘッドホン
没入感を増すため、周囲の雑音を考慮するとあったほうがいいです。より没入感が欲しいコンテンツ(今回のユニティちゃんライブや、Mikulusなど)はノイズキャンセリングが望ましいかも。
ただしノイズキャンセリングの場合、説明員の声が聞こえなくなるデメリットがあります。必要なアナウンスをコンテンツ側に作りこむ、オペレーションを徹底するなどの考慮は必要でしょう。
ウェットティッシュ
HMDのスポンジ部分を拭くために用意しました。余り活用できてなかったので、スポンジ保護シートなどと組み合わせることを考えたほうがいいかも。
フライヤー
これは用意してなかったのですが、どういったコンテンツか、体験時間は何分か、といった情報は紙で掲示しておくとよかったかも。
また、待ち行列ができるのであれば、HMDの調整の仕方なども事前に読んで待っていただけるとよりスムーズになるでしょう。
オペレーション
呼び込み
Ocufesなどとは異なり、「Androidのイベントに来て、講演の合間にうろうろしたらVR部屋があった」というものなので、積極的に並んでまで体験しよう、という方は少なかったです。 従って、遠目に、興味ありそうに見てる人がいたら呼び込んで被らせる形。
皆さん講演の合間に展示を回っている状況なので、待ち時間、終了時間が見える形でないと並んで待ってまで体験するには至らない、と途中で気付きました。今後似たようなケースであれば改善していきたい。
お子様が来られたとき、明らかに13歳未満でしたので泣いて馬謖を斬る思いでお断りしました。この辺りの根拠についてはこちらにまとめられています。ちゃんと断る覚悟を持つために読んでおいたほうがいいです。
セットアップ
体験者に座っていただいてから、スタートまでに気をつけたこと。
- まず、正しく座ってもらう。荷物のために斜めに座ったりしてしまう方もいたので、極力まっすぐ座ってもらう。バックパックなどはそれほど問題ないと思ったので背負ったままで。
- メガネの方、外してもある程度は見えるのかを聞く。
- HMDを被せる。ほとんどそのまま被ってもらってしまいましたが、メガネの方とか女性とか、もっと後ろのマジックテープ着脱を活用すればよかった
- 目とレンズの位置がずれているとボヤけて見えるので、表示されている文字がくっきり見えているか確認。スループットが落ちてでもここはちゃんと調整してもらうほうがいいはず。
- 「上下左右に動かしてはっきり見える位置」「もしくは顔から少し離してみる」という説明がうまく伝わらないこともあって、表現は検討・改善していきたい。
- HMDを装着した状態でリラックスした姿勢を取ってもらい、そこでキーボードの
R
を押してポジションリセット。
スタート
- コースターは、"Look Here"の文字を凝視するとスタートします。ちゃんと見るべき位置を言ってあげて、細かく観測補正(ちょい右、ちょい下、とか)してあげれば、問題なくスタートできていました(逆にサポートなしだと厳しいと思う)。
- コースターが動き出してから、「ヘッドホン被せます」と宣言しつつヘッドホンを被せる。相手は視界を奪われているので、かならず宣言してから。
- まだスピードが遅いうちに、まわりを見渡せることを伝えました。UnityCoaster2 v1.1では左に女の子が座っているので、それを見てもらうのがインパクトありました。
- 伝えるタイミングはスタート前でもいいかも知れません
- ノイズキャンセリングヘッドホンを使う場合は、スタート前に。
ゴール
- ゴールの建物に入ったあたりでヘッドホンを外してあげます
- このときも、先に「ヘッドホン外します」と宣言してから
- 早めに外すのは、自分でHMDを先に外そうとする傾向があるため
- ほとんどの方はHMDは自分で外してもらっていましたが、後ろのマジックテープを外してあげてもよかったかも
- 何か言わないと気まずい、なんと言っていいかわからない、という人もいそうなので、とりあえず「酔いとかないですか?」とか先に聞いてみるなどしました
その後
- ほぼ並んでいない状態ですが、「空いたらやってみたい」くらいの人はいるので、できるだけ早めに椅子から立ってもらったほうがいいです。
- 座ったまま質問などはじめる方もいるので、できれば次の方をスタートさせるまで先にオペレーションする間、待っていただくよう上手く言えるとベスト。難しいですが。
- 無理にHUDを外そうとした際にレンズ距離が動いてしまったことがあったので、定位置にあるかチェックする
所感
こういった形でOculus Riftの体験展示を行なうのははじめてだったので、オペレーションは一日かけて体験者の方を観察しながら改善していった感じです。
重ねて書きますが、当日余り良いVR体験を得られなかった方もいらっしゃると思います。申し訳ありませんでした。Oculusは、VR技術は悪くないので、ぜひぜひこれに懲りずにリベンジしていただけることを切に願います。
今回、展示は自作でなく借りもののコンテンツだったのですが、それでも体験された方のリアクションを見ているのはとてもとても楽しかったです。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。